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転職者が持ち込んだ他社の技術情報に基づく専利出願をめぐる紛争の裁判実務



元従業員が元会社の営業秘密を競合他社に漏えいし、さらには競合他社がその漏えいした技術情報に基づいて先に専利(特許、実用新案、意匠を含む)を出願した場合、裁判所はこの紛争をどのように解決し、判断を下すのだろうか。知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は、20231212日付の110年(西暦2021年)度民専訴字第27号判決において、この問題について明確な見解を示している。

 
本件は、原告X社が、201481日にY社を吸収合併し、Y社の一切の権利、義務及び資産(係争文書を含む)を承継したので、係争文書(ACEF及びGの合計5文書)に記載された技術的内容はその営業秘密であると主張して訴訟を提起した事案である。Y社の総経理であった被告「甲」及び副総経理であった被告「乙」は、2013年半ばにY社を退職し、退職前にY社から係争文書を持ち出し、直ちに同種事業を営む被告Z社に就職した。その後、2013年末から2014年初めにかけて、Y社から設計技術部部長であった被告「丙」、研究開発技術部部長であった被告「丁」及び製造技術部部長であった被告「戊」などの幹部を被告Z社に引き抜いた。これらの幹部は、それぞれ係争文書の一部にアクセスする権限を持っている。
 
被告「丙」、「丁」及び「戊」は、被告Z社の名義で(被告「己」を責任者として)、係争文書の技術について専利を出願し、係争専利を取得し(合計8件)、被告「丙」、「丁」及び「戊」は、それぞれ係争専利の発明者又は創作者として記載されていた。このため、原告X社は、被告「己」、「甲」及び「乙」が、被告Z社の董事長、総経理及び副総経理の地位にありながら、被告「丙」らの上記行為に同意し、指示し、原告X社の営業秘密及び専利出願権を共同侵害したと主張した。原告X社は、係争専利の共同出願人としての確認を求めるとともに、被告「甲」、「乙」、「丙」、「丁」、「戊」、「己」及び被告Z社に対し、連帯して損害賠償金の支払いを求めた。
 
本件において、IPCCは、整理すべき争点とその審理順序を以下のように決定した。
 
一、係争専利の各請求項と係争文書との技術的特徴は、実質的に同一であり、実質的に貢献していると認められるか。
二、係争文書は原告X社が所有する営業秘密であるか。
三、原告X社の営業秘密又は専利出願権の侵害について、被告らに故意又は過失はあるか。原告X社が被告らに連帯して損害賠償を請求する理由はあるか。
 
IPCCの審理結果は以下のとおり。
 
争点1について:裁判所はまず、原告X社が実質的に貢献し、発明者又は創作者として認められるか否かを判断するために、係争専利の各請求項の特徴と係争文書の関連文字又は図形の記載とを一つずつ対比し、実質的に同一であるか否かを確認した。最終的に、裁判所は、係争専利の請求項の一部は、係争文書CEFGと実質的に同一であると判断した。
 
争点2について:裁判所はまず、係争文書の帰属を調査し、原告X社が所有していることを確認した上で、営業秘密法第2条に基づき、経済性、秘密性及び合理的な秘密保持措置の有無の3要件を検討した。最終的に、係争文書Cのみが原告X社の営業秘密に属すると判断した。
 
争点3について:裁判所は、係争文書Aは営業秘密ではなく、係争専利と実質的に同一でもないため、この部分は原告X社の営業秘密や専利出願権を侵害するものではないとし、一方、営業秘密ではないが、実質的に同一である文書(係争文書EFG)については、原告X社の専利出願権侵害の有無のみを論じればよいとした。したがって、原告X社の営業秘密に属する係争文書Cについてのみ、営業秘密侵害の有無を判断する必要がある。
 
本件において、被告Z社の被告「乙」のオフィスから押収されたハードディスクには、Y社の係争文書Cから複製されたと合理的に推認される係争文書C(すなわち営業秘密が記載された部分)が保存されていることが確認できる。被告「甲」、「乙」、「丙」及び「丁」は、いずれも係争文書Cにアクセスし、閲覧する権限を有しており、係争文書CY社の営業秘密であることを知っていたはずである。したがって、被告「甲」、「乙」、「丙」及び「丁」にはいずれも故意があり、共同不法行為が成立すると判断すべきである。被告「己」については、原告X社は、被告「己」が被告「甲」、「乙」、「丙」及び「丁」の上記営業秘密の侵害事実を明確に認識していたことを立証しておらず、被告「己」が故意又は過失により原告X社の営業秘密を侵害したと判断することはできないとした。被告「甲」は被告Z社の総経理であるから、被告Z社は、民法第28条により、被告「甲」が支払うべき上記賠償額について連帯して賠償責任を負うべきである。
 
また、係争文書のうち、係争専利と実質的に同一である部分について、被雇用者が職務上完成させた発明に属するものというべきである。専利法第7条第1項によれば、この部分の専利出願権は原告X社に帰属する。原告X社は係争専利の専利出願権者の一人であり、共同出願人としても確認を求めているのであるから、すでに損害発生前の状態に回復しており、別途損害賠償を請求する理由はない。したがって、専利出願権侵害に関する損害賠償責任を別途被告らに求める原告X社の請求は棄却されるべきである。
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